Monday, 3 March 2014

 かもめ

建物がどれも古びていて味があって、すてきなヴェネツィアの街だったけれど、修復工事は避けられないようで、あちらこちらでわりとカーンカーンとやっていて建設工事の音が多いなあという印象だった。だけどさすがに朝は静か。なので朝食の支度をしようと台所に行って窓を開けると、決まってかもめの声だけが穏やかにエコーしていた。

当然といえば当然だけれど、水の都ヴェネツィアにはかもめが多かった。歩いている時、歩き疲れてひと休みしている時、白いお腹を見せてすうっと格好よく頭上を横切って行って、そのたびにうっとり見とれつつも、落とし物をされないかほんのちょっとひやりとした。
時折、彼または彼女がふあさっと目の前に舞い降りて来た日には、きゃーっと興奮したいのを抑えて静かにカメラを向けた。こういったかもめ達は落ち着いていて、「さあ、好きなだけ撮りたまえ。」とか「撮らせてあげてもよくってよ。」とでも言っているように長々と留まっていてくれる。
ちなみに、ぱしゃぱしゃ水浴びしている鳩を撮ろうとしゃがんだら、すたこらさっさと逃げられてしまった。けっこう冷えるのに、寒くないのか君たちは、しかもこんな日陰で、とぶつぶつ呟いていたからかもしれない。

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